トラウマセラピー

(トラウマ)危険に直面すると人はどうなってしまうのでしょうか?人は何とかその危険を回避しようしたり、もがいて闘ったりします。

 

 

心拍数は上がり、瞳孔が大きくなり、怒りが出てきます。アドレナリンが出て、「闘う」か「逃げる」を瞬時に判断します。

 

 

その2つが無理だと本能的に判断すると、「フリーズ」(凍りつく)します。心拍数は一気に下がり、無力感になり、鎮痛剤であるオピオイドが分泌されます。頭がボーっとして、体は固まり現実味もなくなります。  

 

 

そして多くの人は固まったまま、「闘う」「逃げる」ことが出来ずに溜まったエネルギーを放出する習慣がありません。厳しくて理不尽な大人の言うことを体を硬直させて我慢するしかなかった人は、その時のエネルギーが放出されずに溜まっているかもしれません。

 

 

 

では動物はどうなのか?草食動物はチーターなどに日々襲われていますが、トラウマにはなりません。

 

 

それはその都度、捕まえられそうになってもその後「ふるえて」、その時の恐怖感などを体からリリースさせます。そして何事も無かったようにリラックスして草などを食べ始めます。

 

 

下に北極グマの映像があります。まず麻酔銃を撃つためにヘリコプターがクマを追っかけていきます。その時危険を感じたクマは逃げながら首を左右に動かします(定位反応) 首を動かすことで周囲を見渡し、安全を確認している。麻酔銃で撃たれクマはフリーズします。 闘う、逃げるのエネルギーは捕まえられたため、放出できませんでした。

 

 

しかしその後すぐ歯をむき出しにしながらふるえだします。「神経性のふるえ」と言われています。そのおかげで闘争逃走のエネルギー(ストレス)をリリースすることができました。ふるえの後、クマは安堵の深呼吸をします。残酷な印象を受ける方もおられるかと思いますが、リサーチのための麻酔だと思います。よろしければ見てみてください。

 

 

要するに、トラウマの時に溜まった余計なエネルギーがフラッシュバックとして出てくる。そのエネルギーを解放するのがセラピーの目的とも言えるでしょう。

 

これはStephen Porges博士のトラウマ業界も変えた、ポリヴェーガル理論に基づいています。今は海外のどのトラウマ関係の講演やワークショップに行っても、この理論をもとに話されています。

 

 

 

 

ポリヴェーガル理論

 

トラウマを解放するには、神経のシステムに焦点をあてる必要があります。簡単にいうと、覚醒レベルをモニターすること。

 

闘うか逃げるかの戦闘モードである過覚醒状態になっているのであれば、それをつかまえて、ちゃんと感じて、下げればいい。逆に低覚醒状態である離人症や解離、シャットダウンしてるのであれば、そこからあげればいいということになります。そうすると、穏やかな状態にいることが日常になってきます。

 

この理論は、人間には3つの神経システムがあると論じています。(1)過覚醒状態(2)落ち着いた状態(3)低覚醒の状態。トラウマから回復するプロセスは、感情も大事に向き合いますが、この覚醒レベルに注目することが回復の近道になります。

 

 

 

 

 

トラウマと身体

動物がトラウマを解放しているように、カウンセリングでも身体に意識を向けて少しずつトラウマを解放していくお手伝いをします。まずは「身体感覚」に意識を向けることから始めます。

 

 

例えば、胸が温かいなどの心地よい体の感覚。嫌なことを思い出したときの頭がぐるぐるする感覚。私たちは普段細かい個々の身体感覚に注目することは少ないかもしれません。

 

 

嬉しい感情や体験として感じることはあっても、「胸が温かくて光に包み込まれている感覚」と意識することは少ないでしょう。そして呼吸をしたり、体を動かしたり、手でクッションを押したりなどもします。

 

 

トラウマからの身体レベルでの解放は「当時、被害などのトラウマに遭って出来なかった行動をもう一度する」ということです。

 

 

体ができなかった闘う、逃げるをセラピーという枠内でやり直す感じでしょうか。そうすると安堵のふるえがおこり、安心感が戻ってきます。 これは恐怖のふるえとは異なります。

 

 

相談を進めていく中、もちろん感情のレベルでのプロセスもおこないます。怒り、悲しみ、恥、罪悪感などの感情と向き合い、解放します。 そして、認知レベルのプロセスもおこないます。回復の意味について考え、新しい気づきを見出し、過去の出来事の整理など。

 

 

大事なことは、身体のレベルのトラウマを回復するから、感情や認知のプロセスがおこなわれるということだと思います。

 

 

言葉だけのカウンセリングを長年受けた方と相談することがよくあるのですが、みなさん口を揃えて、

 

「聞いてもらってよかった。頭で過去のトラウマの整理ができた。でもトラウマからの症状(解離、フラッシュバック、人が怖いなど)はほとんど変わっていない」と言われます。

 

 

時に被害の話をしすぎて「再トラウマ化」することで症状がさらに悪くなるといったケースもよく聞きます。 要するに、頭では色々分かったけど、身体レベルでは変わっていない。この基底部である身体感覚に注目したセラピーがようやく日本にも北米などから輸入されてきています。

 

 

身体に注目すると性被害などのトラウマからの回復が断然早いです。「何十年も悩まされていたフラッシュバックが10分の1になった」「自傷行為、依存、強迫、強い不安が落ち着いてきた」などの感想を相談者から聞きます。

 

 

 

 

 

 

回復は可能だと信じてみることから始めてみませんか?






回復のステップ

ステップ1をしないと次に進めないというものではありません。時に1つのセッションで以下の3つの要素を含むこともよくあります。この3つのステップは複雑に関係しています。ポイントはリソース(強み)とトラウマをバランスよく扱っていくことです。

 

 

ステップ1(安定化)
まず安全を感じれるようにする。身体感覚や感情を育てたり、コントロールすることを習得する。あとはセルフケアの仕方、リソースの発掘、バウンダリーの構築、依存、フラッシュバック、解離の対応などをする。

 

 

 


ステップ2(トラウマプロセス)
家族のことや性被害などのトラウマについて掘り下げていく。体や脳にしみ込んださまざまな感覚や感情(怒り、悲しみ、恥、恐怖)をリリースさせるワークをする。

 

 


ステップ3(意味づけ)
意味付けをする。失ったものとは?性的虐待とは?回復とは?そして成長した新しい自分を受け入れて、その新しい自分がどのように周りの人と関わっていくかを考える。