KさんはPOMUでのカウンセリングにくるまでに3年ほど集中的にカウンセリングをされてきた。
被害体験について細かいことは聞いていない。性的いじめが中学校の時にあったことは確認した。ある程度幼少期のトラウマから回復しておられ、過去の記憶がそこまでフラッシュバックしてこない状態だった。
目標は仕事に就くこと。それと結婚すること。それが達成できるくらいの回復を一緒にめざした。まず課題になったのは身体レベルでの性被害などのトラウマ。以前受けていたカウンセリング(EMDRなど)で、感情レベルと認知レベルでトラウマ記憶をプロセスできていた感じだった。
Kさんは被害体験を思い出してもさほど辛くならないと言った。ある程度の回復はしているので、私とは身体のレベルでのトラウマのプロセスに取り組んだ。さらに深い部分にトラウマがしみついてることをリリースさせていく。
セッションで性被害のことを思い出すと肩に力が入ったり、足から、ざわざわ感が出てきたりした。Titration と言われているが、私がリードしながらその「感覚」を少しずつ感じてもらった。
あるときはほんの数秒間。そしてすぐにリソース。周りをゆっくり見てもらうなど。彼の場合は犬がリソース。カウンセリングオフィスPOMUにいる犬3匹たち。その犬たちに触れながら、「安全に」そして「ゆっくり」と。
ある程度身体レベルのトラウマをプロセスできた。あるとき彼は言った。「仕事が決まりました!」「しばらくある仕事を受けるか、もやもやしていた。」無理もない彼は7年間働いていなくて、生活保護だった。しかし、「最近何か吹っ切れた感じがする」と言った。身体のトラウマのプロセスをしたことも大きな要因。
さらに、母の死を悔やんでいた。母に対しての怒り、悲しみ、罪の意識がかなりあった。何セッションか母への想いをテーマに取り組んだ。あるときこのクライアントは母のことを私に語りながら、すこし「泣く」ことができた。
その時、私は「犬(トムトム)がこっち向いてますね」と言った。彼は大きな悲しみを抱えながらトムトムを触ると、そのうちトムトムが彼の顔をなめだした。それもかなり長く。5分以上だっただろうか。
トムトムが人の顔をなめることはほとんどない。彼の深い、大きな悲しみを何とかしたかったのだろう。
私もとても感情的になった。この後、彼はソファーに横になりこどものように安らかに寝った。あまりに起きなさそうだったので、私はしぶしぶ15分後に彼を起こした(笑)。とてもスッキリしたと言う。
この日をきっかけに母の死を受け入れることが出来たという。そして腹が決まり、仕事をやることに決断した。Kさんは目標を達成しました!カウンセリング的には、身体レベルのトラウマのプロセスと母親の死を受け入れたことが、仕事を探す行動力と決断につながったのだと思う。
この話を書くことを許して頂いた彼に感謝したい。彼は言う、「すこしでも他のサバイバーのためになるのなら。」さらに、「サポートを求め、オープンにすることが大事。」彼は前回の3年間続けたカウンセラーに性被害のことは言えなかった。3年間。チャンスは何度もあったと思う。それくらい「認めること」はつらくて勇気がいるのだと想像します。
その彼から「オープンにすること」という言葉は説得力がある。もう一つの彼の目標であ 結婚も何とかなると私は信じている。まず一歩から。Kさんの生き抜いてきたこと、回復に努めてきたことを賞賛したい。